うすいの気まぐれな日記

手話、聴覚障害、マイノリティなどなど

ちょっとした沈黙のあいだに

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11月11日日曜日。東京からの来客が「紅葉が見れるなんて感動!!」と興奮していました。
上記の写真は、紅葉が綺麗に見える道から撮影したもの。逆光で葉っぱの色が見えづらく…でも、木漏れ日が良い感じに。

 

先月からずっと講演、イベント、来客の対応などで予定がぎっしり埋まっているものの、隙間時間に本を読んだり、お茶飲んだりしています。で、カフェで本を読んでいたらこんなことがありました。

 

本を読む私に誰かが近づいてきました。視界に入ってきたので見上げると、全く知らない人が。

「◯◯◯ですけど、◯◯◯◯◯い」。

 

とっさのことだったので「はい?」と思わず、表情で返す。

「あ、◯◯◯ですけど〜」。

 

数秒間、沈黙。「あ、耳聞こえないんです」とやっと返事しました。

 

すると、相手の方は「え?」と戸惑っていました。

この沈黙がたぶん、2秒、3秒は続いたかも。ああ、この沈黙の時間、久しぶり!(懐かしんでる場合じゃないのに)。

 

逃げようとしてるわけでもなく、でもどうしたらいい?と困惑している表情だったので、「あ、書いてくれればOKです!」ということでペンと紙を差し出すと、すぐに書いてくれました。

 

カキカキカキ…

 

隣のスペースで誕生会を行うのでちょっとうるさいかも、ごめんなさいね、という内容。

ああ、私聞こえないので全然お気になさらず〜

 

ということで、「ありがとう」と手話で表したら相手も「あ、ありがとう!」と見よう見まねで手話で返ってきました。

 

この小さな出来事、聞こえない人なら誰でも経験があること(中には逃げてしまう人も!)。相手から見れば、本を読んでいる姿を見て、まさか耳が聞こえない人ということは想定できない。けれど、とっさに紙に書くという行為はコミュニケーションを取ろうという姿勢なので安心感が生まれます。

 

ここで私がなぜ、「耳が聞こえないんです」と応えるのが遅れてしまったのか。

今回は、本の内容がちょっと難儀だったのもあり、頭の切り替えが遅かったこと。

そして、読書の時間の最中だったこと。

日頃、口の形を読み取る時にある程度の想像力を駆使しているにもかかわらず、今回はそれが間に合いませんでした(想像力を使っても、読み取れない時はあります)。

 

カフェでの場面でいうと、カフェをざっと見渡した上で「私に話しかけてくるってことは、私が何かを落としたり、私のことを知ってて連絡先を聞きにきたりするくらいだろう」と想像します。そして、想像する範囲内で使われる言葉が脳内に広がります。

 

「何か落としたみたいですよ」

「これはあなたのものですか」

「本読みました、うすいさんですよね」

といった具合に。

 

そして、相手が実際に何かを話して、脳内に出てきている言葉のいずれかに当てはまったり、それに近かったりするとある程度は、読み取れます。

しかし、今回はまさか、読書の最中に話しかけられるとは思っていなかったので、ちょっとした沈黙が生じました。

 

仮に手話で話しかけられたとしたら沈黙は起きなかったはず。手話を読み取る時も、ある程度想像力を使っているとは思ったけれど、口の形を読み取る時ほどのエネルギーを要しない。この感覚、聞こえる人の場合なら「日本語で話しかけられたら普通に答えられるけど、英語や韓国語でいきなり話しかけられたら…」というようなもの、かな。

 

ということで、本を読んでいる人は必ずしも聞こえる人とは限らないってことですね(いいの?こんなオチで)。