心の中にアルバムを作る
6月19日火曜日。Facebookにも投稿したけれど、ここにも。
鹿児島の噴火に続いて、群馬と大阪に地震が。知人が住んでいる地域でもあるので心配ですが、どうか無事でいられますように。
ところで、先日は鹿児島へ行ってきました。
数年前に高齢の利用者さんが「私がずっと行きたかった地域の中に、鹿児島がある。でも遠いから無理。死ぬまでに一度は行きたかったけどね」という一言がずっと私の中で引っかかっていました。第二次世界大戦の最中に生まれたろう者で、一人で近場を旅することが好きな方。でも、鹿児島は新潟から見ると遠い場所に見えます(飛行機で乗り継がないといけないし、新幹線だけで丸一日かかる)。
施設に通っている利用者さんの中には、旅行自体に全然興味を示さない人もいます。
今までは恒例のイベントとして年に一回、旅行を実施していましたが、興味ない人まで巻き込んで行く価値があるのかどうか、も引っかかっていました。障害の特性により、集団行動を無理強いすることはできないので見直してみよう、と。
オーダーメイドではないけれど、利用者さんが本当に求めているニーズを理解した上で集団行動を学びの場として活用できるよう、イベントを細分化することに。全員が全員、同じ行動をするよりは、それぞれが行動したことを、それぞれ持ち寄って話をすることができればそれこそ「経験の共有」として他者との繋がりのきっかけになるのではないか、ということで今年はいくつか試みることにしました。
その一つが鹿児島行きの旅行。
せっかく行くからには、現地に住んでいるろう者・難聴者・手話のできる聴者との出会いもあった方がいいと思い、「薩摩わっふる」様のところへ。
当施設と同じ就労継続支援B型施設なので、利用者さんも興味津々。ワッフルを頬張りながら作業内容についてお話を伺いました。その後も夜まで交流させていただきました。
NPO法人デフNetの皆様、本当にありがとうございます。
翌日は鹿児島の街を知るために、地元スタッフの案内で観光。観光地を巡る際、説明があるとより魅力が増すはずなのですが、ろう者の場合、視覚的に情報を得るので説明と目の前にある風景が同時に目に入ると、かなり大変。
目の動線を考慮した上での手話ガイドがあると、もっと観光を楽しめたかもしれません。日本語表記の案内板が最近、英語だけでなくハングル語、中国語など増えているけれど、聴こえない人にとっての観光資源がまだまだ数少ないことを実感(鹿児島に限らず、新潟も同様)。
それでも、その地域が放つ日常的な風景は観光客の気持ちを掴むものがあります。今回の鹿児島は、桜島の噴火。
島民にとっては厄介な存在だけれど、非日常的に見える灰は利用者さんたちにとって「ほぉ〜〜〜!これが鹿児島なのか!」と感動的なものに。
テレビでしか見たことがなかったものが、目の前にある。それが観光資源の一つであり、地域の魅力の一つでもあります。
そして、夜に立ち寄った居酒屋では店主が手話で接客。これも利用者さんたちにとって「ほぉ〜〜〜〜!」。店主の思いやり、熱い想いが伝わってきて素敵な夜に。よか晩様、とっても楽しい時間をありがとうございました。
鹿児島に行きたがっていた高齢のろう者、「行ってよかった。あとはもう死ぬだけ……いやいや、また行こうかな!」と笑顔に。
観光はただその地域を巡るだけでなく、訪れた人の心の中にアルバムを作るようなもの。そのアルバムが少しずつ増えるよう、また企画してみます。