うすいの気まぐれな日記

手話、聴覚障害、マイノリティなどなど

過酷な状況でも果敢に挑む人たち

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9月4日火曜日。台風21号(チェービー)が上陸しています。韓国語で「燕」と呼ばれている21号、かなりの勢いなので、燕のように柔らかく最小限の被害で済むようにという願いが込められている名前だとか。

 

しかしながら、各地の被害状況を見ていると「台風って一時的だけれど威力がある」と感じます。今日の夕方、外に出てみたら風がいきなりヒューッッ!!という感じで強く吹いていました。この勢い、いつになったら治るのだろうと思うくらい、久しぶりに「台風」を感じた日。新潟はあまり台風が通過しないので、今回の規模の大きさに驚いています。

www.huffingtonpost.jp

皆さんは無事、帰宅できたでしょうか。足止め食らってしまった人も大勢いらっしゃるようなのでどうか無事でありますように。

 

 ところで最近、読み終えた本がこちら。

マフィア国家――メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々

マフィア国家――メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々

 

友人たちから「何これ、ちょっと怖いじゃん」。メインタイトルを見れば確かに…。でも、サブタイトルが重要。「メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々」。

 

 

どんな本でも、その本を読むきっかけというのは、誰かの紹介だったり、本屋さんでたまたま見かけたりと色々あります。

今回は「BIG ISSUE」で知ったのがきっかけ。著者は工藤律子さん。「女性として足を踏み入れた渾身の取材ってどんなものだろう」と興味があって。

それに、工藤さんのルポ「雇用なしで生きる」を数年前に読んだことがあり、雇用関係での仕事が当たり前にある中、助け合いのコミュニティからお金を介在させない取引の仕方が書かれていて衝撃を受けました。

 

 

今回の本は、トランプ大統領の「壁を作る!」発言で話題を呼んだメキシコが舞台。

一般市民たちを巻き込む犯罪組織、地元警察、役人のリアルな現実が書かれています。

2016年の殺人発生件数が、シリアに次いで2位。

 

理不尽な要求を突きつけられ言いなりにならざるを得なかったり、幼い時に親を殺された子供たちの実態についても書かれていました。読むにつれて、国内ではあまり考えられない残酷さもあって終わりが見えない国の行方に、ため息が出そうに。


でも、どんなに過酷な環境でも果敢に「改善する」ことに取り組む人がいたのです。国の腐敗だけでなく、一般市民たちの活動もいくつか紹介されていました。その中の一つは、社会福祉士や医者、看護師たちが連携を図り、医療や心理ケアを行ったり、ワークショップを通して「暴力とは何か」「真の平和とは」と若者に議論する場を提供したり、被害者家族の支援に取り組んだり。

 

最も驚いたのは、その活動に携わっている人が20代〜30代が多いこと。中には元ギャングのリーダーだった人もいること。暴力の中に居場所を見出せず、親友の死をきっかけに足を洗い、地域の将来を考えて支援する側に回るといったケースも紹介されていました。

 

日本人の視点を織り交ぜながら数年間に及ぶ取材活動が生々しく、でも、どんなに過酷な状況でも一つのコミュニティを作り、人脈を広げ、次世代を育てながら戦略的に非暴力のやり方で改善を試みていく人が何人もいるのだという事実。これはテレビニュースではあまり報道されない部分。

工藤さんはそういった人たちの取り組みを発信したく、本を出版されたと思うと命懸けの一冊でもあるように思います。

 

この国では、何もしなくても、連れ去られたり殺されたりするんです。だったらいっそ、意味のある殺され方をしたい。おかしな社会を変えるために声をあげ、闘って死にたいのです。(「マフィア国家」より引用)