うすいの気まぐれな日記

手話、聴覚障害、マイノリティなどなど

ひとり旅の食事

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1月2日水曜日。新年に読み終えた一冊は「一号線を北上せよ」。たまたま実家に置いてあった文庫本で、ヴェトナム市街編というサブタイトルに惹かれ、そして著者が沢木耕太郎ということで一気に読了。

 
巻末には、女優・高峰秀子さんとの対談が収録されていた。高峰秀子さんといえば、あの映画、「名もなく貧しく美しく」。

 

映画は見たことないけれど、周りの高齢者(ろう者)たちが懐かしそうに語るので「たかみね ひでこ」が自然にインプットされる。日本で初めて、ろう者の生活にスポットが当てられた映画とはいえ、私はまだ見たことがない。でも見たことがあるような錯覚になってしまった。そういうことで、高峰秀子、という名前を見たときは偶然とはいえ、「ああすごいなぁ!」と小さく感動。

 

対談は巻末にあり、本全体の3分の1以下の分量だけれど印象的だったの引用してみる。まずは、ひとり旅について。


沢木:危険なところに迷い込んじゃっても、そこから回復できる、引き返せるというのがその人の力じゃないですか。

そういう自分の力を計りながら旅行してるんだと思うんですよね。その力の自分量をうまく見つけられない子たちが、危険なところに行って回復できなかったりすると思うんです。

 

だから「一人旅はいいですよ」と勧めるひとつの理由は、誰かに助けられないで、自分一人で自分の実力を計りながら旅行できることなんです。そうやって一個一個確かめながら旅することで、少しずつ身の丈が高くなっていくような感じがあるんですね。

 

高峰:確かにそうですね。一人で旅すると、キザな言い方だけど、自分てものが見えてきますよね。沢木さんが書いてらっしゃったけど、例えば、バスに乗って窓から綺麗な景色を見た時、誰かと一緒の旅だと、「綺麗だね」「うん、綺麗だ」で完結しちゃうけど、一人だとその綺麗だという思いが胸の内に静かに沈んでいって醸成されていくと。

 

ひとり旅の魅力をうまく言葉で表されていて、「わかる〜!」と共感。12年前に宮古島を訪れた時に見た景色を今でも覚えている。でも、ひとり旅は良いことばかりじゃない。と思っていたら、それについても対談で触れていたので引用。

 

沢木:でも唯一、一人旅で辛いのが食事する時なんです。一人だと美味しいものが食べられないじゃないですか。例えばレストランだって、外国は日本みたいにカウンターというシステムがないから、フランス料理だって一人で来られたら困るでしょう。高峰さんがパリにいた時、どうでした?

 


高峰:そう言えば、そうね。ちょっと寂しいといえば寂しかったかな。だけど、「ああ、寂しいなぁ」と思いながら、それでもいつかこの寂しさを 懐かしい思い出 にしたいと思ってました。

 

二人で行けば少なくとも2種類は食べられるし、グループなら取り分けできる。だから人と食べに行くのは、私の中では好きなこと。好きな人と一緒に食べに行けるだけでも嬉しい(そして、それをなぜか、顔に出さないように努めている)。

ひとり旅で得られるものは、人によって違うけれど、少なくとも食事に関してはきっとほとんどの人がそう感じているんじゃないかな。一緒に何かをする時、「食べる」という行為が他者と共有しやすく、ハードルも低い。

前にひとり旅していた時のこと。島を回ったりダイビングした後に「さて、夕食はどうしようかな〜」と街に出かけようとしたら、ゲストハウスのメンバーに呼び止められ「一緒に食べましょうよ」。これがきっかけでいろいろな方々の話が聞けてとても楽しかった。旅している間は、一人の方が気楽に自由に動ける分、どこかの時間で誰かと話をすることを欲しているのかもしれない。

ひとりがいいと思って出かけた旅なのに、ひとりじゃちょっとなぁ、と思う瞬間がある。それを分かっていても、次にまたひとりで出かける。その繰り返し。

 

久しぶりに旅について思い馳せた一冊。今年はいろいろなところに出かけてみようかな。