うすいの気まぐれな日記

手話、聴覚障害、マイノリティなどなど

一人のろう者のお話

f:id:syuwakoushi:20181214231224j:image

12月15日土曜日。

 

飲みにいきたいなぁ。

−はい、行きましょうよ。

 

旅行に出かけたい。

−私が代わりに予約しましょう。

 

あれが食べたいな。

−車出すから一緒に行こう。

 

(ん?ちょっと待って。

◯◯したいなぁ、と言えば周りが動く。

自分は何もしなくてもいいってこと?

それってすごいじゃん。)

 

それから数十年後。

 

休み取れたからどこか行きたいなぁ。

−いいね、行こうよ。

 

映画見たいなぁ。

−あれ見てみる?一緒に行こ。

 

友達が結婚するって?お祝いしたいな。

−誘ってみたら?

 

ん?ちょっと待って。誘ってみたら?っていうのは、自分からってこと?

−うん、そうだよ。

 

それから1年後。

 

このお店に行ってみたい。

−うん、誰かと行く?なら、予約してみたら?

 

耳聞こえないから予約なんて無理だし。

−え?カンケーないよ。いくらでも方法はあるし。

 

(ここで手話通訳者から「私が代わりに電話してあげようか」と一言)

 

あー助かった。代わりに電話してくれるなら楽チン。じゃ、頼むわ。

−いや、断れよ。自分でできるんだろ。

 

(え?今までは周りが動いてくれてたのに…)

 

−人数、行きたいお店が分かれば後は動けるだろ。大丈夫。何かあったらその時は、その時だからさ。

 

(まぁ、そうだよな。いい歳していつまでも周りに頼るのもなんだかな…通訳者は優しいけど、確かに自分で予約してみるのも悪くないかもな)

 

それから数日後。

 

やった、フツーに食事会できた!

−こないだはありがとね!

−美味しかったよね!

 

(予約して周りに連絡して実施するって、どうなるかと思ったけど案外、楽しかった!お店の人も怪訝な顔しなかったし、聞こえないと言ったらフツーに対応してくれて嬉しかったな)

 

ありがとう、自分でやれ!と言ってくれて。

−いやいや、無事終わって良かったね。今度飲みに行こうぜ。

 

俺が予約しとくよ!

−お!やるじゃん〜

 

 

 

(つづく)