うすいの気まぐれな日記

手話、聴覚障害、マイノリティなどなど

色眼鏡かけるくらいなら透明な眼鏡を

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11月20日火曜日。駅で見かけた鳥巣箱のような木箱。

これは「乗り放題」の「ノリホ」ではなく、乗車人数+報告の、ノリホだそうです。鉄道に詳しい友人曰く、列車の人数を紙に書いて投函というアナログなやり方で、最近は減っているとのこと。貴重な木箱だそうです。

 

分からない時は聞いてみるものですね。

気になった時は調べてみるものですね。

 

私たち人間はどうしても思い込んでしまう時があります。そして、この思い込みが間違った決めつけ、レッテルを貼る行為に繋がることも無くはありません。

 

先日、こんな話がありました。

手話通訳の仕事をしている人に「聞こえない人とはどうやってコミュニケーション取るんですか」と質問がありました。ろう者に会ったことがない聴者からの質問。

 

手話だったり筆談だったり…と答えた後、近くにいる、ろう者を指差して「この人は口の形を読むことがすごく上手いんですよ」と付け加えて説明。聴者は「ええ?そうなんですか」と驚き、近くにいたろう者に話しかけてみました。

概ね通じていたので「すごいなぁ」と感心しきり。

 

しかし、そのろう者は大変困惑していました。

 

と、友人から聞いた話はここまでになりますが、この話は続きがありまして。

 

口の形を読み取れていたにもかかわらず、なぜ困惑していたのでしょうか。

 

口の形を読み取ることを「読唇術(どくしんじゅつ)」といいます。これが、一部の聴者にとってはかっこよく見えてしまうそうです。たしかに音がなくても何を話しているのか分かれば、まるでマジックでもかかったかのような気分になりますね。

 

この読唇術がくせ者で、口の形が読めるから誰でもどんな口の形でも読み取れる!というわけではないのです。ボソボソ喋る人もいれば、早口でマシンガントークで話し込む人もいる中で、口の形だけを見るのは結構しんどい作業。相手の声が聞こえにくい分。

 

1時、2時、7時。

ビール、水。

きつい、キウイ(今日食べました)

 

口の形がほとんど似たような形になっています。それを、単語レベルにとどまらず、文章や会話レベルになると、何を言ってるのだろう?と想像力をフル稼働しないといけなくなります。

 

さて、先ほど困惑していたろう者。

なぜ困惑していたのでしょう。

 

手話通訳者が「この人は口の形が読み取れますから」と「配慮」したつもりかもしれませんが、結果的には「この人は手話は使いますが、口話ができるので手話使わなくてもいいですよ」とも受け止められます。

 

先ほど困惑していた理由は、そこにあります。

つまり、当事者である本人が望むコミュニケーション方法を、代弁するつもりでフォローした通訳者が「口話できますよ」と説明したため、ろう者のコミュニケーション方法が限定されてしまったということ。

 

私にも似たような状況に出くわしたことがありました。

「あなた、口話ができるんでしょ。だってインテグレーションで育ったんだもの」。

 

インテグレーションというのは、聴者が通う学校にろう者も通って学ぶというもの。

 

残念ながら(?)私はインテグレーション育ちではないし、聴者と同じ学校に通ったからといって全員口話が上手なのかというと、そうでもなかったり。それに、口の形が読み取れるということを褒め言葉として受け止めるのは学生のうちだけ。

 

先ほどの困惑したろう者はその後、どうなったかというと…

 

手話通訳者に対して「口話が上手だって?それじゃ、今日から口パクで会話しましょうよ」と返したという。

 

誤解のないように書きますが、手話通訳者も人それぞれ。本当にいろいろな人がいるので、ごく稀に「あなた、実は耳聞こえてるんじゃないの?」というツワモノに出会うこともあります。

 

ああ、思い込みは怖い。

でも、誰にでもあること。間違いに気づいたら直していく。

 

ということで、今日もお疲れ様でした。また明日〜