うすいの気まぐれな日記

手話、聴覚障害、マイノリティなどなど

聞こえない世界での電話

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10月14日日曜日。スノーピーク(本社が新潟県三条市)のチェア、最高。このチェアに座るために帰る、と言っても過言ではないくらい座り心地が良い。読みたい本が少しずつ読めるようになってきています(そして、そのまま寝てしまうという…)。

 

生活の一部を物理的に変えるだけで、行動まで変わるから不思議。

ところで、住まいの環境を変える時に頻出するのが「電話をください」「本人確認したいのでお電話を」「電話番号を教えてください。電話しますので」。

 

以前よりはメールやネットで登録情報変更手続きができるので、電話ができなくてもさほど困らない。「耳が聞こえない人は電話ができない。」というフレーズは矛盾しつつある時代になっています。

ただ、「耳が聞こえない人も電話ができる」というのもまた矛盾しつつある時代。

 

耳が聞こえないといっても、人によっては残存聴力を活かして電話したり、特定の人となら電話でも話せます。全く耳が聞こえない人でも、かつて電話を使った経験があったりします。公衆電話を使って家族に電話をかけ、一方的に用件を伝えて終わり(だって、向こうからの声が聞こえないから)。

 

15年くらい前にアメリカで文字通訳による電話を見て「聞こえない人でも双方的に、電話ができる!」と感動したくらい、私にとっての電話は「使いたくても使えないもの」の一つでした。

今や全く聞こえない人にとっても使えるようになったのが電話リレーサービス

 

オペレーターが中間に入り、聞こえない側は手話、文字などによって用件を伝え、聞こえる側は音声で応対するもの。

電話リレーサービスとは? | 電話リレーサービス普及啓発推進事業

 

「電話リレー」を通して人とつながる、世界が広がる | NPO Information Gap Buster

 

目も耳も不自由な盲ろう者の電話リレーサービス『CAAG VRS for the Deaf-Blind』 | LICOPAL

 

 

しかしながら、聞こえない人全員がリレーサービスを使ったことがあるかというとそうでもないです。電話する必要性がない(同居している家族に電話を頼めばいいとか)、そもそも電話ってどういう時に使うのかイメージができないようです。

 

電話なんて無理ムリ。

 

聞こえない世界での電話、というのはテレビ電話(直接、相手の顔を見ながら話をする)が一番分かりやすいものの、相手も手話ができることが条件になっています。かつてドコモがFOMAを始めた時に爆発的にテレビ電話が流行りました。

 

じゃあ、手話ができない相手だったらどうするの?メール、LINEすればいいじゃん。

 

面白いことに、耳が聞こえる人の中には「私、聞こえるけど電話好きじゃないの」という人もいます。電話する時間が勿体無いとか、メールの方が記憶に残るからとか、理由はいろいろ。

 

電話はできるけど電話しない。

 

これは「電話ができている」が前提になって初めて選択できるもの。

 

では、聞こえない人にとって「電話はできるけど電話しない」という選択ってできているかどうか。

物理的な環境見ると、通訳できるオペレーターの人件費の確保、時間的な制限といった課題があります。24時間体制ではないので、仕事が終わって帰宅した後に電話したくてもできない、かといって朝電話するとしたら8時からになる。とはいえ、数年前よりは格段に電話が使える環境になっています。

 

心理的な部分も含めた生活環境はどうでしょうか。

 

電話できたらラクだけどどうやって電話したらいいか分からない、電話すれば解決できるのに初めからその方法が思いつかない、ということがあります。電話のかけ方について、ホームページを見たら分かるものの、最初から電話を使うかどうかというスタート地点に立っていない人を、どうやって案内するか。

 

・実際に使っている事例を情報交換する。

・情報交換するための機会(SNSにアクセスできない、読み書きに苦手意識があるろう者が繋がれる機会)

・現時点で電話できる環境を作る。

・その他

 

それがクリアできて初めて、電話できるけど電話しない選択できるようになるのでは。きっと今以上に何かしらの変化が生活の中に生まれると思います。

そして、聞こえない世界の中での電話が普及するのはそう遠くないかも。