字幕派のみなさん、「読むといい本」がありました。
私の趣味は映画鑑賞、旅、読書です。
映画は、字幕があるものを観ています。時々「あ、見てみたいな」という映画が邦画だと、
淡い失望感を抱きます。
邦画は、日本語でのやり取りだから「字幕なんて不要」なんでしょうね。
字幕は目障りで邪魔、という話も聞きます。
『ハリー・ポッター』とか『アントマン』みたいな大ヒット予感がする作品は、吹き替えもあります。
字幕に必要性を感じている人は少数派なのかな、なんて思いますが、私には「字幕」という選択肢しかないのです。なぜなら、耳が聞こえないので。
邦画はたいてい、観る前に諦めています。
(昔のろう者は、字幕という選択肢すらも無かったのでやむなく、映像だけを見て想像を巡らしながら楽しんでいたそうです。すごいですね。)
でも、それでも諦めきれなかった邦画が、過去に一本ありました。
フィンランドが舞台の『かもめ食堂』、フィンランドから帰国した後に観ようと思っていたのに、DVDのパッケージ裏を見たら「日本語字幕はございません」と。
フィンランドが舞台だったので、やっぱり旅したところがロケ地なので一度は、観ておきたいところ。
レンタルして、最初は登場人物の口の形を読み取りながら想像力をフル稼動してみましたが、難しいですね…。
途中から英語字幕に切り替えて、なんとか最後まで観ました。そんな自分を褒めたい…と前置きが長くなりましたが、そんな貴重な「字幕」について、おもしろい本を発見。
何かのブログで紹介されていたので、買って読んでみましたが、痛快!です。
字幕を作る仕事の苦労話をおもしろおかしく描かれています。
でも、重要なキーワードや内容もあり、手話通訳者にとっても参考になりそうです。
ろう者にとっても。
聴き取りにくいセリフは何度も聴いたり、人間関係や筋書きや文脈で推定する必要も出てくるでしょう。つまり、ヒアリングには高度な知識と教養と責任感が不可欠であり、その言語を日常的にしゃべって暮らしているというだけでは不十分なのです。
たとえば、こんなセリフはどうでしょう。I'm not lying.嘘じゃないわ
この直訳で十分に短く、原音のセリフにピッタリ収まる気がします。(中略)3〜4文字の字幕にしなければいけません。直訳の「嘘じゃないわ」は6文字で多すぎます。そこで、もうひとひねりしてつくった字幕は、「本当よ」。
ろう者にとって、映画の中で混乱しやすいのは、複数の登場人物がほぼ同じタイミングで話している場面。特に、主人公の顔がアップになり、周りに3名以上の人が交互に話をしている場面だと脳みそが疲れます。
テレビの字幕と違って、話者が誰であろうと、字幕の色は白いです。
語尾で想像するしかないですね。「〜じゃ」とか「〜よ」、「〜だわ」などなど。
複数の言語が使われている場面について、著者はこう書いていました。
物語の展開にもよりますが、やはり「この人はみんなと違う言語をしゃべっていますよ」ということを観客にわかってもらいたい。耳で聴いて「あ、これは英語じゃないな。スペイン語だな」とわかる人ばかりならいいのですが、そうもいきません。そこで字幕の出し方によって区別する方法を模索します。
単に訳せばいい、ということではないですね。
複数の人が早口で話している場面は、取捨選択することもあるようです。手話通訳と似ています。
かなり苦労されていることが伝わってくるので、字幕派のみなさん、きっと応援したくなる一冊です。